岡三アセットマネジメント株式会社 企画総務部　人材開発グループ長 新谷啓介（写真）
岡三アセットマネジメント株式会社 企画総務部　人材開発グループ　シニアマネージャー 片岡理子

教育面とコミュニケーション面での二つの課題

岡三アセットマネジメント株式会社は「お客さまの豊かな人生を創る」の経営理念のもと、お客様一人ひとりに最適な資産運用サービスを提供することを目的としています。より多くのお客様に対し、革新的で想像を超える商品の開発や、期待を超え感動するサービスの提供を目指して挑戦を続けています。

当社では、教育面とコミュニケーション面の2つの課題を改善することを目的に、SkillBoxの導入を決めました。

1つ目の教育面の課題は、新卒社員の育成に関するものです。私たちが所属している資産運用業界は、専門性が高い業界のため、数年前までは中途採用を中心に、プロフェッショナルの採用に重きを置いていました。しかし、不確実性が高まる環境下で生き残るには、スキルのみならず、柔軟性や適応力が、人材、組織双方に必要となります。そこで、当社では、近年、吸収力や柔軟性の高い新卒社員の採用に力を入れ始めました。新卒社員を育成する上で多くの大事なことがありますが、私たちは内省やフィードバックがとても重要だと考えています。そして、内省やフィードバックを促進するには、それが迅速、丁寧に、さらには多方面からできる環境が必要です。当社にもチャット含めた様々なメッセージツールがありますが、即時性はあっても多くの人とコミュニケーションしづらい等、全てに満足がいくようなツールがありませんでした。育成の環境を整備する上で、この点に課題意識を感じていました。

2つ目の課題は、組織内のコミュニケーションに関するものです。コロナ禍で在宅勤務が増えたことにより、社員同士の気軽なやりとりや細かな配慮等の感情面のコミュニケーションが減少したと、複数の社員から意見が寄せられました。コミュニケーションと一言で言っても、そこには様々な要素があります。職場のコミュニケーションでは、仕事に関する情報伝達が主となる一方、感情面のコミュニケーションも重要となります。顔を合わせてのコミュニケーションが減少したことで、感情面のコミュニケーションに課題を感じる社員が増えたことにも課題意識を持っていました。

これらの課題に対する解決手段を考えている時に、SkillBoxに関する話を聞く機会がありました。話を聞く中で、SkillBoxはこれらの課題解決に役立つと考え、導入しました。

当社には社内チャットをはじめ、SkillBox以外にも複数のコミュニケーションツールがあります。SkillBoxの導入を検討する際には、本当に必要なのかという議論もありました。

ただし、SkillBoxは内省やフィードバック（配慮、気遣いを含む）を主としたツールとして、既存の業務連絡主体のコミュニケーションツールと切り分けができると考えたため、まずは試してみようということになりました。

試験導入に際しては、利用人数、部署を、新卒社員と3つの部署に絞りました。利用の最初からあまり人数が多くなりすぎると、実際の利用方法を細かく丁寧に見ることができず、事後分析がしづらくなると考えたためです。活用方法においては、日々の行動目標、行動リストを設定し、それに対して利用者が毎日コメントや感想を記入し、上長や育成担当からフィードバックを受け付けられるようにしました。行動目標や行動リストは、企業理念やビジョンに紐づいたものとし、行動変容を意識させるような内容としました。

（アクションリスト例：岡三アセットマネジメント様で実際に運用中のもの）

各部へ配属後のフォローとお互いに切磋琢磨する環境作り

一番うまくいった、役に立ったなと思う使い方としては、新卒社員のSkillBox利用です。新卒社員研修期間中も、日々の振り返りツールとして有益だったのですが、それ以上に配属後の方が役に立っていると思います。

配属後は、配属部署でOJTが始まるのですが、人事からすると、部内で適切な指導やフォローがなされているのかは気になります。現在、当社では配属後も人事・新卒社員間でSkillBoxを通じてコミュニケーションをとっています。新卒社員は、毎日SkillBoxにその日の業務内容と感想を記入しています。このようにすることで、人事側でも配属部署でどのような仕事をしているか、またどのような学びを得ているかが分かるようになりました。仮に新卒社員のコメントに異変があったようなときには、配属部署に知らせることもできます。

また、新卒社員は、同期同士、お互いの回答が見えるようにしています。必ずしも全員が同期のコメントを見ているわけではありませんが、多くの新卒社員が同期のコメントを確認し、スタンプを押すなどの反応をしています。同期のコメントを見ることで、自身の仕事の参考にしたり、自身のモチベーション向上に結び付けたりしているそうです。これは、本当に良い効果だと実感しています。

業務日報のように形式張っておらず、気軽にコメントができるところも、SkillBoxの良さだと思います。この気軽さのお陰で、書く負担が、意識的にも時間的にも減ります。このことも、配属後においても有効活用できている理由だと思います。

これらは、新卒社員だけでなく中途で入ってきた社員も同様です。当社では、中途社員の一部にもSkillBoxを利用させております。実際にあった事例として、ある中途社員のコメント欄に「○○について分からない」という記入がありました。このコメントのお陰で、この中途社員の課題に気づくことができ、対策を講じることができました。これまでも、中途社員に対し、「何かあれば言ってください」と伝えていましたが、あまり反応はありませんでした。よく考えると、入社したばかりの社員が、日頃からそれほどやりとりしているわけではない人事に連絡をするというのはハードルが高い気もします。SkillBoxでは、その「日頃のやり取り」が、毎日所要時間1分程度の簡単なものとしてできます。社員にとっては、「ツールがあるから書いてみた」くらいの気軽さで連絡ができるのかなと感じました。

全社員に効果が見込める意外な気づきも

SkillBoxは、新卒や中途の新入社員だけではなく、既存社員含め、どのような社員にも気づきを与えることのできるツールだと思います。

現在、当社では、SkillBoxを利用している部署、社員に対して、毎日の行動振り返りや記録を依頼しております。毎日記録することが、内省やフィードバックの頻度やスピードを上げ、一人一人の行動変容に結び付くと考えているためです。また、毎日コメントやスタンプのやり取りを行うことは、感情面に配慮したコミュニケーションを行うことにもつながります。私自身も、自分の記録を見返す中で、「最近自分は効果的な仕事が一切できていない」と気づき、もっと効率を上げなければいけないと考えました。行動を変えられたかはまだ分かりませんが、少なくとも意識が向いたことは間違いありません。

「記録頻度は週に1回でいいのではないか」という意見もありましたが、結果として、私たちは毎日の方が良いと思っています。中には毎日記録しない人もいますが、だからと言って罰則などは設けておりません。ただ自身の振り返りに役立ててもらいたいという思いです。実際、複数の社員から、「最初は面倒だと思っていたが、やっていれば意識するようになり、行動変容につながる」という意見が寄せられています。毎日積み重ねていく中で、人それぞれのタイミングで気づきを得てもらえればいいなと思います。

これまでは、SkillBoxの活用の仕方を内省やフィードバック中心にお伝えしましたが、社員の中には、振り返りと共に「今日、○○で☓☓を食べた」など普段の何気ないコメントを書く人もいます。私たちは、これも非常に大事なことだと考えています。例えば、上記記載のコメントに、上司が「味はどうでしたか？」などのコメントを寄せたりしています。在宅勤務も続き、なかなか何気ない、気軽なコミュニケーションが取れない中で、このような活用方法にも非常に意味があると考えています。実際に、管理職の社員からは、「コロナ禍でなかなか感じることのできなくなった社員一人一人の個性が見えて役立つ」などの意見も寄せられています。このようなコミュニケーションができることも、SkillBoxの良さだと感じています。

組織を活性化できるツール

今後は、蓄積したデータを分析する等、さらなる組織活性化に向けて、活用していきたいと考えております。また、今までとは異なる活用方法についても模索していきたいと思っています。

SkillBoxは、組織を活性化していく上で必要な気付きを与えてくれるツールです。個人においては、日々チェック、記録をしていくことで内省を促し、また色々な人からフィードバックも受けることができます。組織においても、組織内外のコミュニケーションを促進させることができます。私たちの会社でも、まだまだ上手く活用できていませんが、活用ができている部署は組織内が以前より活性化されているように感じています。

このような事例を積み重ねる中で、今後はその成功体験を組織内、組織間で共有し、会社全体の活性化に結び付けることができるようにしていきたいと考えております。